経営者向け「孫子」入門(13) 事業システムとは…

2016年12月20日

IMG_1634 孫子軍形篇第四の中に、「見勝不過衆人之所知、非善之善者也。」という一文があります。読み下し文では「勝を見ること、衆人の知るところに過ぎざるは、善の善なる者に非ざるなり」となります。戦いの第一人者は凡人が予測しうるような作戦計画は企てないといいます。また「善用兵者、修道而保法。故能勝敗之政。」ともいいます。読み下し分では「善く兵を用うるものは、道を治めて法を保つ。故に、能く勝敗の政を為す。」といいます。現代文にすると戦争の奥義を極めた者は「道」を修め、部下をしてその法令・法規におのずと順守させるものである。それ故に、彼は勝利の方策を打ち出すことができるのである、となります。

ここで言えることは、誰もが思いつくような計画を立案し実行してはならない、さりとて単なる思い付きであってもならないということです。戦争の奥義を極めるためには「道」を修めるとありますが、「道」とは主権者と国民との関係を言います。企業家において「道」は経営者と従業員の関係として捉えるといえば矮小化するかもしれませんが、いわゆる「全社員一体となる」方策を修めるということです。そうすれば、部かに守るべき規範、規則、マナーなどをおのずと順守するといいます。また誰もが思いつくような計画を立案しないとありますが、どのような経営方針あるいは戦略が簡単に出てこないようにする、言い換えるならば仮想競争相手から簡単に見えないようにすることが重要であり、且つ基本に踏まえたものでなければならないのです。

では経営方針を設計する、ないしは戦略を設計する基本を読み解いていきます。『事業システム戦略』第1章では、基本選択として自社の担当を担当する範囲と他社がどのように自社の仕組みにかかわらせるかの二点が重要だといいますが、これはあくまで基本選択であって、そのほかに、特に他社とどのようにかかわるかに関して、活動間の調整が必要であるといいます。調整を市場メカニズムに任せるとあまり問題は生じませんが、意図的に調整を試みようとすると考える要因は5つあるといいます。その五つとは分業構造、インセンティブシステム、情報の流れ、モノの流れ、カネの流れです。経営学において人、モノ、カネ、情報を四大要素としてこれらの要素をどのように活用するかが経営者の仕事といいますが、文字通りこれら5つの分配は経営者の仕事の骨格をなすものです。更に、これらの分類をどのように関連性を持たせて行うかについて設計することが事業システムのポイントとなる点です。

先程、奇抜なアイディアはあまりといいましたが、奇抜なアイディアというものは必ずしも奇抜ではないことが多いからです。奇抜なアイディアを出そうとすると、本来なら定石を踏まえたうえで行うことであるからで、孫子の中にも「道」を修めとあるのはそのようなものであるからと思っています。