「孫子」を読む(18) 「いけ、いけ、今だ!」

IMG_1331孫子勢篇第五では「善戦者、善勢険、其節短」、現代語訳では「戦いの本質をよく弁えたものは、抵抗することを能わざる衝撃力を絶妙のタイミングにおいて投じるのである。」とあります。ここで目に行くのは「絶妙のタイミングにおいて投じる」ことになろうかと思いますが、実際には「戦いの本質をよく弁えたもの」のほうが重要だと考えています。

絶妙のタイミングにおいて投じるのは、財やサービスの市場投入ということになります。経営戦略を検討するにおいて、財やサービスの市場投入タイミングは早すぎても遅すぎても駄目で、かつてSONYが松下電器品川研究所と揶揄されましたが、こういった場合では財やサービスの市場投入のタイミングが遅すぎても早すぎても駄目ということが言えるでしょう。ソニーの発表の1年後に投入することはインパクトが弱すぎますし、翌日に投入しても先行品のインパクトが弱いということになります。これとは違ってジェネリック医薬品の場合は、市場投入タイミングと小売薬価は公定なので企業が自由に決定することは出来ません。絶妙のタイミングというものは、ここでは市場や在・サービスの性格に応じてタイミングを決定することになります。

これに対して「戦いの本質をよく弁えたもの」になるためには、専門用語では「概念フレームワーク」といいますが、「思考の型」を持つ必要があります。思考の型を持つとは「原理原則に立ち返って自分が行うべき実施内容を引き出す能力」を確保することにあります。「自分が行うべき実施内容」を専門用語で「オペレーション」といい、オペレーションを設計した人間は思考の型を提供する役目を持っています。ただ、オペレーションの背後に隠れている『事業コンセプト』や『経営理念』を引き出すことは決して簡単なことではありません。

これを説明する例として、レンガ職人の例と、スピットファイアの例があります。ちなみに内容自体は同じですが、有名とは言えないであろうスピットファイアの例を挙げたいと思います。スピットファイアとは第二次世界大戦当時のRAFの防空戦闘機です。この話で登場するのは工場動員の女子工員3名、従事業種は飛行機のねじ止めです。一人目はねじを止めているといい、2人目は飛行機を製作しているといい、3人目は国を守っていると答えました。作業者から理念を引き出すことが困難である例として私は捉えています。

戦いの本質をよく弁えたフレームワークの例として『事業コンセプト』があります。事業コンセプトの要素は、対象となる顧客はだれで、どのような価値を提供し、実現するためのオペレーションの方法が構成要素となります。「価値を提供するアイディアや工夫」がオペレーションとなり、オペレーションに落とし込まれなければならない「思考の型」が必要となります。思考の型については理念から導出され、オペレーションに落とし込む必要があります。但し、オペレーションから思考の型を導き出すということは簡単ではありません。理念をもとにして事業計画を導出し、事業計画をもとにしてオペレーションを設計、実施する必要があります。

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