創業者はニーズではなくシーズが出発点です(1)

創業時に「創業者は本業に集中して付随業務はアウトソーシングしましょう」という広告を見かけることはあると思います。すべてのことを自分でやることは不可能であるため付随業務のアウトソーシングは検討に値します。この点、『事業システム戦略』第5章は、どの活動を自社で取り組み、残りの業務を遂行する取引先とどのように関係性を構築させるかによって事業システムの骨格が決まるといいます。

水平方向の幅を広げると範囲の経済性を追求し、垂直方向を追求すると速度の経済を追求することになり、事業分野を集中させることにより集中化と外部の経済性を追求できることになりますが、この他に取引コストアプローチ、ゲーム論的アプローチ、比較制度分析アプローチを検討する必要があるといいます。取引コストアプローチ、ゲーム論的アプローチ、比較制度分析アプローチはいずれも経済学の理論をもとにしています。

とはいえ、水平方向の幅、垂直方向の追求、事業分野の集中ということがどういうことであるかを確認します。2017年6月19日号の「日経ビジネス」は本邦における石油元売事業者について特集を組んでいます。この石油元売事業が水平方向、垂直方向についての理解を行うのに分りやすい事例を提供することになります。ビジネス書籍で「川上・川下」という言葉が出ると垂直方向のビジネスの話だと判断していただいて間違いありません。石油業界における川上は油田の権益が出発点になりますし、川下はガソリンスタンドまで到達します。つまり、川上とは原材料の確保の話であり、川下は消費者へのアプローチの話となるのです。これに対して水平方向の展開は「多角化」という言葉で示されます。石油元売りの多角化の入り口は精製の後に取り出した化学工業の原料を自社で活用することを意味します。この点については本邦の石油元売ではなく韓国の同一施設内にある製油所+石油化学コンビナートを取り上げて説明しております。

これに対して事業分野の集中はまさしく創業時の企業全般に当てはまります。創業時ではヒト・モノ・カネの経営資源が十分にはありませんので、典型的な装置産業である石油元売は出来ませんし、創業時は多くても数人でなされるためあちらこちら分散すると何をするために創業したのかについてぼやけることになりますから、可能な限り事業領域を絞り込むことで事業立ち上げの成功を図る必要があります。実は、地元の市民会館に入っているレストランの社長と話をすることがありまして、彼が行ったことは「メニューの絞り込み」だそうです。この目的は「材料廃棄ロスを減らすこと、筋肉質の企業体を作ること」と言っておりました、また「メニューを豊富にすることによって顧客の要望に応えるように見えるかもしれないが、レストランの維持が困難となる」といいます。ここではレストランの維持を重視するという意思決定が見られるのです。実は集中化は「できるとは思われるけれど比較劣位であるものことを捨てる」という意思決定を行っているのです。先ほどから触れている通常の営業では定食三種類に日替わりランチ、カレーとうどん、それに夏場にざるそばを出しますが、事前予約の結果、市民会館で催される行事で提供されるケータリングでは全く異なる料理を出します。これはニーズがあるからというよりシーズでそうしているということです。創業時はシーズが出発点です。

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