事業承継を考える(1) 事業承継その前に

今、事業承継が熱いのです。2018年4月1日を開始日として10年間、「中小企業事業承継推進キャンペーン」なるものを推進します。とは言いましても実際にかような名称のキャンペーンを展開するわけでありませんが、中小企業庁や国税庁の施策がいろいろと組み合わされて強力に事業承継の支援が推進されます。主なものは、経済産業省所管項目では「事業承継5か年計画」で示されておりますが、①経営者に対する気づきの機会の提供、②事業承継環境の整備、③事業承継マッチング支援の強化、④小規模M&A支援、⑤人材育成となります。また、「中小企業事業承継円滑化法」で規定する非上場株式の納税猶予によって規定される贈与税及び相続税等の納税猶予の利用を推進する目的で「特例事業承継税制」が平成30年度税制改正で導入されたことわかるように、積極的に中小企業の事業承継環境整備を行っております。ではなぜこのような環境整備を推進するようになったのでしょうか。 国が事業承継を推進する背景はリンク先にある図に示されています。

http://www.meti.go.jp/press/2017/07/20170707001/20170707001.html

 図をどのように読むかは人ぞれぞれですし実際のところこの図自体はどのような意味を持っているか不明ですが、近畿経済産業局と大阪国税局の担当官はこの図について「経営者が変わっていないことを意味する」と説明しました。私がかかわらないようになってから経営者が変わることはありましたが、私の周りにある中小企業では年齢にかかわらず経営者が変わった例はゼロでした。

中小企業で経営者が交代しない一番大きな要因は経営者自身が一番の経営資源であることではないかと思われるからです。私も数回資金調達のために有価証券目論見書を作成したことがありますが、そのすべてに『当社の事業は経営者の能力に依存するため事故等により経営者がいなくなると事業存続に陥る可能性がある』といったコメントしました。経営者自身がこのような自覚がある中では、後継者及びその候補は頼りないという風に見えるのかもしれません。経営者自身と比べて後継者は若くて経験不足であり、事業の中心にいるわけでないことも手伝って「頼りない」と経営者は考えます。また事業引継ぎをすると会社に自分の居場所がなくなってしまうと考えるのではないかと思われます。このような背景がある中で、70代の経営医者の企業の中で後継者未定の企業が半数あるといいます。自分より未熟である人間に経営権を引き継ぐことなどできないというのが一番本質的な要素ではないかと考える次第です。

事業承継キャンペーンを受けて中小企業庁や国税庁は各種施策を展開するのですが、これらの施策の何を適用するかを考える前に、事業承継について最も重要な意思決定を行う必要があります。それはいつ誰にどのような形で事業を承継するかです。ここが決まらないとどのような制度を利用するかは決めることができません。会社を売却するという形式で事業を残すと決定した会社の二代目に対して帝王学を学ばせることはたぶん無意味でしょうし、事業会社の形式で事業承継を行う場合にディールをどうこうといってもピンとこない結果になります。事業承継はいつ誰にどのような形で実施するかが最初に行うことであり一番大事な事でもあります。