経営革新計画(2) 最初はドメインの定義から

前回のコラムでは、経営革新計画の相談に行く際に「事業計画」を持っていくといいですよと触れましたので、ここからしばらくは事業計画の制定過程を述べていくことになります。しかし、事業計画についての問題点に少なからずの経営者がそのようなものは必要ないと思っていることが挙げられます。これは編成に時間がかかる割には効果が低いことが多いことが要因です。このようなことが続くと、あほらしくなって事業計画の編成なんてやってられない、となります。また、ある程度以上の企業になると事業計画の編成と実行が別部門になることもあり、「現場を知らない人間が編成した計画で統制することに現場は反発する」ことになりかねないのです。しかし、事業計画は適切に編成し運用すると企業を成長軌道に乗せてくれます。その為には先人が確立した「標準的な手順」に従うことが大事であると考えます。我々「認定経営革新等支援機関」の存在意義は、「標準的事業計画編成手順」を企業別にカスタマイズすることにあります。誰もそのように言いませんが。

まず、最初に行うことは「私は何者」を明らかにすることです。社会から報酬を得ているということは社会に対して何らかの貢献を行っています。その貢献の内容を明確にする作業を行うのですが、「私はどこにでもあるものを提供しているので、社会に何も貢献していない」と述べる向きもあります。しかしそれは提供する側が無自覚なだけです。自覚することによって、自分が社会に貢献する内容を意識することができます。意識することができると行動が変わります。行動が変わると自信につながり、自信がつくと積極性が増すという正の循環が作用します。そこで「私は誰」と問いかけることが必要となります。

「私は誰」の表明を業界用語では「ドメインの探求と経営理念の表明」といいます。このように述べますと大半の中小企業経営者は拒絶反応を起こしますので、わが社は何者かという定義が必要であるということを例を使って説明する必要があります。であったとしても、困ったことに例として存在するのは大企業における事例のみですから、「うちとは違う」で聞いてもらえないという結果になりますが、星野リゾートの取り組みを説明および理解していたくことができると少しは説得力を増します。

事業ドメインの探求と経営理念の表明については特別な道具を必要とするということはないです。例を通じた学ぶことになります。経営理念については例を散見することができますから、ここではドメインのことを触れます。事業ドメインとは「事業領域」という訳語を与えられています。例えば、アメリカにおける鉄道事業者が衰えたのは自らを「旅客運送業者」と捉えることはなく「鉄道事業者」と理解したことにより飛行機をライバルとは思わなかったといいます。また、ホチキス社では自らの定義を「はさむ企業」とすることによって思わない方向に事業が展開します。ただ、ドメインについての重要な点は、広げることが目的なのではなく「広げすぎることを止める」ことにあります。例えば、東京急行電鉄が自らを投資業と捉えるのか旅客鉄道運送業者と捉えるかによってグループ会社の構成を見直す必要があろうかということになり、日本エアシステムと東急車両はこの基準からして東京急行電鉄には必要ないとする判断がなされました。この事業ドメインは最終的に多角化を行う際のブレーキ役になってくれます。とはいえ、いきなりドメインを定義しろと言われても困ることが関の山、創業社長であればなぜ創業しようとされたのかを思い出していただけるとおのずと答えは出てくるはずです。次回に事業計画について述べていきたいと思います。