事業承継を考える(6) 誰に引き継ぐか

 中小企業基盤整備機構が発行する『事業承継支援マニュアル』によりますと、事業承継計画の1丁目1番地は誰に引き継ぐかを検討することが必要だ、とあります。更に、早めの対策が必要になります。これは後継者と認識させるのに少なくとも5年は必要とされるという統計資料が掲載されているからです。とはいえ、先代経営者が余命宣告がなされない限り後継者のことを意識しないこともあり得ますので、そのような場合には取りうる手立ては限られます。私の場合は、父が創業した会社は残さなければならないが、父が行っている業務の進め方をそのまま残すことはできないと思っています。ただ、形は変えるけれどスピリットを残すためにヒアリングを行い、生きざまを踏まえて会社を残そうと決めました。事業承継としては教科書通りではないと思っています。

ところで、わが町大東には、Biz方式と呼ばれる形式で運営されるビジネス支援機関「大東ビジネス創造センター」が存在します。センター長に「松井さん、そのままの形式で残せるの?」と聞かれましたので、真面目に「今の形態のままでは無理です」と答えています。2018年9月6日18時30分より税理士による事業承継に関するセミナーが開催されるということですから受講します。私としては他人から自分がどのように見えるのかがわかる良い機会と思っていますから受講します。また、自分たちが考えたスキームは考慮するべき要素が漏れていないかどうかの確認も併せて行います。

さて、会社の事業承継をする際に最初に検討するのは誰に引き継ぐかを考えることですと述べておりますが、候補者は親族(何も長男とは限らない)、従業員、得意先や仕入先、全くの別会社が想定されます。まず、最初に挙げた親族から全くの別会社と選択肢が広がるについて企業規模が大きくなっていきます。規模が小さい企業になれば企業と代表者個人財産が一体となることが多いため親族承継しか選択がないという事態が起こり得ます。また、繰越利益剰余金がマイナスであるけれども雇用責任を考えるということで親族が承継せざるを得ないということもあり得ます。従業員や第三者が承継する場合は株主資本がプラスでないと承継は困難であることが想定されます。このため、承継の前に黒字化をする必要が迫られる公算が大きいです。最も、会社を立て直すチャンスとばかりに引き受ける第三者もいらっしゃるかもしれません。また、親族承継であったとしても、マイナスからの出発というのをよしとする人はあまりいないことを考えると事業承継しないとする選択をする経営者の気持ちもわからなくもないし、たとえ繰越欠損金が出ているにもかかわらず承継してほしい人間の気持ちを汲むと後継者としは不思議と「借り入れも起こせない会社なんて」とは思えないことだってあります。

中小企業の事業承継とは少し違いますが、大塚家具さんは2代目の久美子社長のもと運営されることになりましたが、社長交代後わずか三年で財務諸表にGC脚注(2期連続営業赤字または2期連続営業キャッシュマイナスでかつ改善の見通しが立たない事態にある)がつく事態になっています。実質無借金の会社を受け継いで(大塚家具は勝ち取ってでしょうね)もこうですから、繰越欠損会社の承継を受けるというのはなかなか覚悟が必要と思います。

実は私、関与先で1社だけ特例事業承継税制を念頭に置いて対策の考慮をお願いしている会社がありますが、特定事業承継税制の活用を意図するものではありません。事業承継は平均5年程度時間が必要であるとする統計データの存在を踏まえて、だれに何を譲るのかを検討していただくきっかけを特例事業承継税制に求めました。『事業承継支援マニュアル』にもあるように、税制はあくまで事業承継の一部ですから。

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