成年後見を考える 普及の余地がある成年後見

私は家庭裁判所にて「参与員になるべきもの」と推薦名簿に名前が記載されています。参与員とは「法律家ではない素人」の立場から裁判所に対して意見を述べる人間を指します。参与員は古くから存在する制度でして、家事審判に立ち会う参与員がいれば、受理面接に立ち会う参与員もいますが、私は成年後見に関係する参与員です。ある研修会において裁判官に「参与員も後見人になれますか」と聞きますと、「どんどん引き受けてください」とのことでしたから何とかして引き受けた次第です。

さて、平成30年8月26日付日本経済新聞の一面には認知症患者の資産が200兆円に迫るとの記事が出ていました。このような事態に陥ったときに必要となるのが成年後見人となります。制度の解説につきましては法務省のホームページを参照していただくとしまして、少なくとも認知症になられると判断能力が広範囲に消滅しますから完全な法律行為をすることができません。このことが成年後見制度を定めた根拠となります。裁判所の中にいる人間としてはあまり感じませんが、利用者が少なくてまだまだ利用者を増やす余地があるといいます。とはいうものの、裁判所への報告が大変であることや、第三者後見人に依頼する場合などは報酬の支払いが高いのではないかと思われていることが多いため、法律家の間では可能な限り成年後見制度を利用しないでおきましょうとする指導を受けることが多いとも聞きます。

しかし、成年後見制度を利用しないで認知症の方を放置することなどできないと考えるものですから、もっと成年後見制度を利用するための方策を講じる必要があるのではと思う次第です。ただ、成年後見制度を利用する場合は、遺産分割や保険金受取がきっかけになるようですが、いったん後見人が選任されますと現状ではお亡くなりになるまで後見人が付きます。そこの表現法に問題はあるかもしれません。更に、後見人は広範な権限を付与されているように見えますが、実態は財産処分に限られます。確かに、身上監護も任務の中に入っていますのでそこは何とかしないといけないと思いますが、一身専属権に該当する身体上の権利、特に手術実施可否判断などできません。ただ、日常生活以外の法律行為はすべて取り消すことができますし、財産に関するすべての法律行為を代理できるというのはなかなか恐ろしいですね。

では、なぜ成年後見制度が使われていないのかと考えると幾つかの要因があると思います。まずは、民法に「制限行為能力者」という概念があることを知られていないことでしょう。成人と未成年を区別する根拠がここに求められるのですが、民法において「意思表示の形成過程について問題がある方とない方の違いについて」規定で見せますということを受けて認知症の方と健常者を分ける根拠もここにあります。次に、「善良なる管理者の注意義務」で管理することになれていないため、色々と報告書を提出させることにつながっているのではないかなという風に理解されている可能性もあります。ただ、毎日少しずつ帳簿をつけるとそんなに苦にはならないようになり、かつ慣れてくるから帳簿付け楽しくなるような気がします。

あくまで、成年後見制度は被後見人本人を救う制度です、確かに専門職を使いますと報酬の発生がありますし、親族が憂いているならば親族ご自身で成年後見を引き受けるといいでしょう。ただし、選任されやすいからと言って急に他人のお金を管理する能力があるとは思えないですね

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