事業承継を考える(7) 事業を引き継がせるには

中小企業基盤整備機構が発行する『事業承継支援マニュアル』によりますと、事業承継計画の1丁目1番地は誰に引き継ぐかを検討することが必要だ、とあります。更に、大企業の社長の仕事で最も重要なものは「自身の後継者を作ること」と言います。そうであるならば、中小企業においても同じことが言えるはずですが、大企業とは異なり候補者となる人間が少ないのです。企業規模が小さくなればそれだけ候補者の第三者⇒従業員⇒親族と捜索範囲が狭くなるようです。

ここでは、親族承継に念頭を置いて事業承継を考えていきます。事業承継において最も重要なことは以前から述べていますが「誰に何を承継するか」です。「誰に」に関しては親族である場合、性はともかくほぼ親子に特定されます。「何を」は会社の支配の源泉である会社株式でしょうか。あるいは会社社屋や現預金などの目に見える資産でしょうか。

今回のタイトルは「事業を引き継がせるには」としましたが、その意図は後継者に後継者の自覚を促すにはどうするかということにあります。貴族はその家柄に対する責任を自覚することによってのみ貴族たり得るのですが、このような責任は生まれたときからの環境と教育によって自覚を促すといいます。であるならば後継者もかなり早い段階で後継者としての自覚を促す必要があるということになります。自覚を促すということは後継者を自然と放置するとその様に自覚するのではなく、先代社長が意図的に仕込む必要がありそれも意図的に仕込むようには見えるのはまずい公算が大きいということを意味します。早い人では後継者が小学生のころから仕込むといいます。仕込むとは言っても先代の仕事を紹介するということから初めていき、徐々に仕事と会社に対する責任感を植え付けます。また、学校を終了して修行をさせることになりますが、自社内で修業をさせる又は社外で修業をさせるにかかわらず、年月で区切らず一定の成果が出るまでは修行を継続させる必要があるのではないかと思います。年月で区切ると、終了年月の到来までは修行するという対応になると思いますが、それが意図した結果を得るかとなればはなはだ疑問です。なお、経営者に対して要求される能力は決断力であることを考慮するならば、修行先で職場におけるスキルを身につけることを期待するということではないということになります。

次に、「何を」引き継ぐかとなりますが、一番重要なものは『事業承継支援マニュアル』では知的資産と示されているものです。知的資産の例として「経営理念」「社長の持つ信用」「営業秘密」「特許・ノウハウ」「熟練工の持つ匠の技」「得意先担当者の人脈」「顧客情報」「許可・認可・認証」があります。私が思うに、「創業者の想い」「仕事に対する情熱」などもここに入るのではないかと思うのです。ただ、困ったことにこれら知的資産は目に見えないことが特徴で、普段の生活にも感じることができない可能性があるものです。更に、事業承継は経験豊富でかつ年齢を重ねたな人間が、経験が浅く年齢の若い人間に引き継ぐことを意味するため、通常は先代社長から見れば後継者は頼りなく見えるものです。この為か後継者は頼りなく見えるものです。この頼りなく見えることを防止するためには、会社の強みの根源である「知的資産」の活用術を身につける必要があります。ただ、「知的資産」は先代経営者ですら自覚していない可能性があります。

事業を引き継がせるには、後継者に後継者であるという自覚を促すことと、自覚を促すための事業経験をさせること、最後に会社の強みの根源である「知的資産」の内容を把握することが必要になります。