J.C.ワイリー『戦略論の原点』を読む(3) 戦略の分類

ワイリー提督によれば、戦略は「順次戦略」と「累積戦略」に分類できるといいます。順次戦略とは「それぞれ別個の行動から形成された、ある一定の段階を踏んでおり、しかも各段階は戦略家によってあらかじめ起こることがそれぞれはっきりと予想されており、それがどのような結果につながるかも予測されるものだ。よってその実際に起こりうる結果が、その次の段階を決定し、それが次の段階や次にどのような行動をとるのか、又は次にどのような行動を計画しなければならないのか、というところまで決定」する戦略を指す。これに対して「累積戦略」は「すべてのパターンが小規模の行動の集合によって成り立っており、しかもこの小規模の行動がそれぞれ前後の順序を踏んで起こるわけではないようなタイプのものである。この小規模な行動の一つ一つは、戦争の最終結果にとってはプラスであれマイナスであれ、個別の数値のような価値しか」持たないとします。

 軍事的な話であれば、陸戦はおおよそ「順次戦略」に該当します。典型例は「バルバロッサ作戦」における初期のドイツ軍の進撃であり、あるいは「オーバーロード作戦」から始まりベルリンへの進攻に到るヨーロッパ第二戦線の構築になります。確かにパリを迂回する、あるいはアンデルヌにおけるドイツ軍の反攻を無視して連合軍は進撃をすることは多分不可能だったと考えられます。これに対して「累積戦略」の例は軍事的な話よりも一般的な生活の中に見出すことはできます。例えば、選挙運動は一つ一つが独立した小規模な行動であり、一回目の個人演説会の結果が二回目の個人演説会の結果を左右するという性格のものではありません。あるいは企業が行う広告宣伝活動は先に行われたプロモーションが後から行われるプロモーションに影響を与えるというものではありません。しかし選挙運動であれ広告宣伝活動であれ、ある段階を超えると混然一体となって効果を発揮するものです。ただ、「ある段階」がいつ到来するかは「事後に」判明する点が「事前に効果が解っている」順次戦略とは異なります。ワイリー提督は累積戦略の着想を海戦の推移で得ることができたといいますし、戦略構築のベースを累積戦略に置き、累積戦略の強さが順次戦略の有効性を強化することを示しています。また、累積戦略の強固さが順次戦略の有効性を左右することが戦略構築を融通無碍にするのではと思っています。

 では、累積戦略を構築するためには何が必要であるのかとなりますが、その特性から事前に何が必要となるかのすべてをわかることができません。わかっていることは事前に定めた戦略目標や目的と、そこから導かれるいくつかの「小規模な行動」です。すべてが解っているのかわからないのか判断できないことがポイントとなります。従って、宙ぶらりんな状態の中で判断基準とその元となる価値基準を持つことを意思決定者に与えることが思考道具として戦略論を読んでいく方法論であると思います。