事業の創造 解題(1) 阪急電鉄小林商法を取り上げた意図

本稿で阪急電鉄を取り上げた理由は、事業の構築を行うためには顧客創造は必須であること、事業構築を行うためには実施者が無理をしてはいけないことの具体例として、適切な解説者がいれば阪急電鉄の事例は理解可能であるということにあります。顧客創造と事業構築のためにはある種の想像力が必要であること、真似はできないからと言って気にする必要はないことを示すのに典型的な事例であるということから取り上げています。事実、小林商法を完全にまねされることは現時点ではありませんが、鉄道会社各社は小林商法を参考にしています。

さて、事業構築を考えるに当たり収益の源泉を確立することは必須となります。収益の源泉を構築すること、すなわち顧客を創造することが必要となりま
す。阪急電鉄の事業システムは「電車の乗客を増やす」という観点から開発された、一人の顧客から異なる数個の方法による収益を確保するシステムです。すなわち、沿線を分譲して乗客を誘致し、ターミナル駅を開発して乗客を輸送し、かつ最終目的地にするというシステムは一人の乗客にから異なる方法によって収益を確保します。沿線分譲やオフィスビルないしはホテルや専門店街などの商業施設、ターミナルデパートの建設、劇場の設置、リゾートホテルの開発といった手法がそれです。

また、事業構築を考えるうえで、行う人間に無理が生じるような内容は破たんするため、事業構築は無理をしないことが要請されます。阪急電鉄が行った顧客創造手法は、その企画を行った小林一三氏から見れば無理をしたものではありません。通常の鉄道会社では電車の運行と少女歌劇はつながりませんが、小林一三氏から見れば発想の飛躍ではありませんでした。また、ターミナル駅は通過するものであると思われていたところにデパートメントストアを作り駅で金を落とすことを考えることは、アメリカにおけるある百貨店の構造から増築回数を言い当てた小林氏から見れば無理のないことでした。

 

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