『孫子』は「五事七計詭道十三変」と表現されます。前回は「五事」を取り上げましたが、今回は計画立案要素としての七計を取り上げます。孫子も「戦争計画を立案するに当たっては、次の要素をつぶさに吟味し、比較検討しなければならない」といって7つの要素を挙げます。
① 為政者と国民の関係はいずれがより親密か
② 主将はいずれがより有能であるか
③ 気象・天候条件や地理的条件は、いずれの軍により有利に働くか
④ 軍紀に対しては、いずれの軍によりよく実行されるか
⑤ いずれの兵士の方がより優秀であるか
⑥ 将兵はいずれのほうがより訓練されているか
⑦ いずれの方がより公正な賞罰を行っているか
そして「五事七計」を説いた段階で孫子は「私が説く戦争論、戦略・戦術論を理解認識して、これを実行する将軍は手放してはならない。採用を拒む将軍を起用すれば敗北は必定である。彼は罷免すべきである」と強い口調で述べています。もし、孫子を読みこなして何かを得ようとするのであればこの段階で成果が得られるはずだ、ということになります。ただ、われわれは21世紀に生きるビジネスマンですから孫子の言うことをそのまま受け入れることはないと考えられます。そこで「七計」に該当するものは何であるかの検討をすることが必要になると思います。
この概念を知ってすぐに連想したのはM.E.ポーターの「5つの競争要因」、すなわち、
① 競争業者(業者間の敵対関係を表す)
② 新規参入者(新規参入者の脅威を表す)
③ 代替品(代替品・サービスの脅威)
④ 供給業者(売り手の交渉力)
⑤ 買い手(買い手の交渉力)
を連想しました。先に見た通り七計は自身と外部の関係を比較するものですから、自身と競争相手を理解するポーターの『競争の戦略』との関連性を見出すことができるのではないか、または見出すことができるような読み方ができるのではないかということがいえるわけです。
ただ、現在の経営学ではポーター理論ではまだ不足している箇所があるといいます。われわれは、日々の経営実践の中で理論を先行することが必要となってきます。あるいは、難解な理論を自分の身の丈にあったものにする作業をする人間の協力を必要としてビジネスの展開を図る必要があるのではと考えています。