「孫子」入門(5) 「戦争を始めるにあたって」

images 孫子第2編は「作戦編」となっています。内容は戦争を始めるにあたり準備しなければならないものが国家経済の観点から、戦争がもたらす害悪を指摘します。戦争をするための資材の確保、資金の確保、兵士の確保を行うにあたり国の負荷がかかることを問題視します。また一旦戦端が開かれたら、補給が続く間に短期で決着をつけることが重要であり、長期戦になってはならないと指摘します。これは長期戦になると、資材不足や兵士の士気不足により勝利がもたらされることはない、ということです。

 第1章で「戦争は国の一大事」といった孫子ですから、武力行使については慎重です。このことは後ほど出てきます。ですから、孫子自身はこのような指摘を行うことにより武力行使を可能な限り控えるようにするということを主張しています。我々は兵法といえば武力行使法を明確にした学問領域を連想しそうですが、必ずしもそうではありません。戦争が害悪である以上、戦争をしないに越したことはありません。

 さて、我々のビジネスにおいても「競争優位」に立つために活動をしているわけですが、孫子に限らず、加護野忠男先生も「競争優位」を永続的に追い求めることの非を指摘されるわけです。孫子は戦闘を行うことを最終手段と置いています。であるならば、ビジネスで生きるわれわれも競争戦略は最終手段ということではないでしょうか。最近の用語でいえば、競争で血みどろの海を航海する「レッドオーシャン」ではなくて、「独自のビジネスモデルをもって大海原をすすむブルーオーシャン戦略」という話になるのでしょう。

 最近、堀江貴文氏が「起業をしないことはリスクである。なぜならば、現在、社会にないものを提供すれば起業はできるのだから」という言葉をどこかで述べていますが、この「今は存在しない」ものを提供することは独自性がビジネスのエンジンになるということを示しています。我々のビジネスにおいて独自性はどこかで必要となります。それは何かということについては一概には言えませんが、例えば、人間関係がビジネスシステムの重要な要素であることもあるでしょうし、組織運営がビジネスシステムの重要な要素であるということもあり得ます。これは一概には言えませんのでこんな考えもあるのだなあ、という感じで理解していただけるとよろしいかと思います。

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