企業財務入門(2) 決算書の使い方

不景気になると決算書の読み方という本が売れるそうです。どうも決算書には秘密の呪文が隠されているらしいのです。決算書には秘密の呪文は隠されていませんが、経営者たるもの決算書の一つや二つ読みこなせないといけないという噂がまことしなやかに流されています。とはいえ決算書と聞いてすぐにアレルギーを起こす経営者も多いことも事実ですし、数字は税理士に任せていますという経営者も多数いることは否定できません。今回はこのアレルギーを取り除くことが目的です。

では決算書を眺めてみましょう。ちなみに私が用意したのはイオン株式会社の連結決算短信とフジメディアホールディングスの連結決算短信と近畿日本鉄道の連結決算短信、及び独立監査人の監査報告書です。何が書かれているかは重要ではありません。何が書かれていないかが重要です。決算書はご存知の通り会社の内容を数字で表しますが、数字で表れないものは表現しません。多分決算書を見てもわけがわからないという方は、この決算書が持っている特性を納得していないのではないかと推測します。この三社を選んだのは適当ですが、決算書を見ていただいたらわかる通り同じ形をしています。特に連結決算短信は証券取引所が形式を決めていますし、短文式監査報告書は内閣府令で文章そのものが定められています。

実を言えば決算書は読者を想定しています。このことはほとんど意識されることはありませんし、決算書ぐらいは読めないという方からそのようなアドバイスを受けたことがあるという話を聞いたことはありません。どちらかといえば経営者たるもの決算書ぐらいは理解できないとねといわれます。その意見を否定する必要はありませんが、どの程度理解していなければならないかということについて、私は同意できないことがあるのです。特に上場会社や金融商品取引法上の大会社の決算書はだれでも入手できます。誰でも入手できるということと誰でも読めるということは違うということはあまり言われません。本屋で売られている書物はだれでも触ることができますが、読者を選んでいるはずです。決算書もこれと同じです。決算書が想定している読者は「短文式監査報告書に記載されている意味が分かる人」です。この条件を満たす人は少なくとも大学で会計学を学んだことがある人間に限定されます。従って、経営者たるもの数字のことは任せるということは言ってもかまわないのですが、数字がどのような会社活動によって作成されたかを説明する必要はあります。

決算書は読者を想定するといいましたが、使い方も限定されます。決算書は会社の外にいる人に対して会社の内容を説明するために使います。会社の外の人とは取引先、資金の貸し手、税務署、株主に限定されます。このため、彼らが知りたいことを説明することになります。彼らの関心事項は掛け代金が回収できるか、貸付金が回収できるか、納税できるか、配当できるかです。このために数字によって会社の内容を説明するのです。企業活動と数字の結びつきを明確にすることが経営者に求められることです。金にまつわることを重要視するかどうかは経営者の判断によりますが、金がショートすると会社経営は破たんします。でも困ったことに、決算書をいくら眺めても資金繰りがわかるということはありませんし、会社運営上必要な情報がすべて出ているわけでもないし、経営戦略がわいて出ることもありません。

決算書はあくまで、会社の外部の方に儲かったかどうか、資産がどうなっているかを説明するものです。外部に説明するために必要なことが書いてあると割り切っていきましょう。

 

アメリカの書籍は詳しく説明します。

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