経営者向け「孫子」入門(7) 「派手な戦いはダメです」

IMG_1300孫子第3編は「謀攻編」となっています。英訳本によりますと”Offensive Strategy”と表題がついています。攻撃ですから会社経営に置き換えますと営業活動ないしはマーケティング活動となるでしょうか。

前回のコラムで、孫子は国家間の戦争は害悪であるということを触れました。これは戦争をするための資材の確保、資金の確保、兵士の確保を行うにあたり国の負荷がかかることを問題であること、長期戦になると、資材不足や兵士の士気不足により勝利がもたらされることはないことから害悪であると孫子は説明します。クラウゼヴィッツの戦闘絶対主義とは異なります。

孫子が言うには、敵国を無償で手に入れること、全軍を無償で手に入れること、一部を無償で手に入れることの順番で良い策であり、百戦百勝は必ずしも良策ではないといいます。これは第2章から導くことができる結論になります。

言い換えますれば、

  • 第一に、敵の意図や政戦略を無効にすること、つまり何もさせないこと
  • 第二に、敵の同盟関係を断ち切って孤立させること
  • 第三に、敵軍を野外で攻撃すること
  • 第四に、要塞に籠城する敵を攻略すること

の順で方策を採用することを求めます。ちょっと話はそれますが、自衛隊が前線で発砲することなく仮想敵国の攻撃から守るということは積極的に良いことと評価されるのかといいますと、それほど話は単純でありません。自衛隊が発砲しないのは強固な日米同盟を前提とするからです。

余談が過ぎました。経営の世界において目指す点は競争相手が存在しない世界で商売をすること、最近流行の用語では「ブルーオーシャン戦略」とでも言いましょうか、となるのではないでしょうか。参入障壁が高いので競争相手になることができないビジネス環境を構築することを目指すのですが、ビジネスの世界では公益性がない限り、独占禁止法の観点から不可能です。独占を禁止するのは一企業の利益ではなく、競争を促すことによって国民全体の利益になるという信念があるからです。

同盟関係というのは我々のビジネス環境の中で見出すことはいくらでもできます。「ケイレツ」は同盟ということが正しいのか否か微妙ですが、日米同盟という用語からすれば同盟関係といってよいと思います。最近ではスター「アライアンス」メンバーというぐらいですからあれは同盟です。Tポイントやポンタも同盟でしょう。Tポイントはビックデータで結びつく同盟です。これに入らないことでビジネスが不利になるかもしれません。

ビジネスは目立つタイミングというものが存在します。高収益なビジネスモデルを構築した場合は可能な限りこのタイミングを後ろにずらす必要があります。早めに日経ビジネスの取材などが入り高収益が発覚しますとすぐに真似されて、ブルーがレッドに代わります。とこのように述べるのは簡単ですが、資金調達の都合で目立つ必要があるといった事情が生じることがあります。

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